前回、ブログで生成AIとの付き合い方や“AI疲れ”について書いたところ、意外にも多くの共感の声をいただきました。
「自分もなんとなく疲れてた理由がわかった」「腑に落ちた気がします」などのコメントを通じて、生成AIとの関係性は技術的なもの以上に、心理や文化、そして世代によって大きく左右されていると改めて感じました。
そこで今回は、さらに一歩踏み込んで「なぜ若手はAIに疲れ、ベテランは活用に戸惑うのか?」という視点から、生成AIの“世代間ギャップ”について考えてみたいと思います。
なぜ、世代によって「疲れ方」と「戸惑い方」が違うのか?
スクリーンタイムと脳疲労──若手ほど“認知的に疲れている”
2025年2月にパーソル総研が公表した調査によると、週52時間以上のスクリーンタイムがある20代社員は、そうでない層と比べて脳疲労を感じる割合が1.5倍、不安傾向は1.6倍に上るとのこと。
生成AIを業務に取り入れている若手層ほど、プロンプトの繰り返しや出力の検証作業が重なり、“判断疲れ”や“情報圧”を感じやすいことが推察されます。
さらに、米ウォール・ストリート・ジャーナルでは、生成AIを使ってリサーチを行った人々は、検索で調べた人と比べてトピックの理解度が低くなる傾向があると紹介されています。
つまり、「疲れるだけ」でなく、**考えない構造に無自覚に陥る“知的な疲弊”**も起きている可能性があります。
世代別に異なる“向き合い方”と“つまずきポイント”
海外の調査では、30〜44歳のミレニアル世代が生成AIを最も積極的に活用しているという結果もありますが、日本国内では必ずしも同様の傾向が見られるとは限りません。
たとえば、日本国内の複数の世代別調査を見ると、生成AIの活用は若年層ほど進んでおり、世代が上がるごとに利用意欲や実態が下がる傾向が見受けられます。これを前提に、世代ごとの“つまずき方”には以下のような仮説が立てられます。
※以下は公開調査の傾向をもとに、筆者が整理した仮説です。
世代層 | 主な特徴 |
20代(若手) | 情報処理には慣れているが、認知疲労+AI依存による浅い理解リスク |
30〜40代(中堅層) | 「便利そうだが使いどころが分からない」「面倒そう」という感情から、様子見姿勢が強い |
50代以上(管理職層) | 情報リスク・スキル格差に対する不安が強く、「使う理由がピンと来ない」と感じがち |
「全員に同じやり方を求めない」が最大のポイント
生成AI導入の現場では、「まずは全員で使ってみよう」という全社一律のアプローチが多く見られます。
しかしこれは、各世代の負荷や不安を見落とし、結果として疲弊や導入の頓挫につながる構造になりがちです。
たとえば以下のような「世代別の活用起点」を設定することで、スムーズな定着化についての仮説のもとアプローチを検討しています
世代層 | 導入アプローチ |
20代向け | 「毎回考える」を減らすプロンプトテンプレート+出力レビュー支援で認知負荷を軽減 |
30〜40代向け | 成果の即時性を感じられるよう、日報要約や議事録整理など身近な業務タスクから着手 |
50代以上向け | 成功/失敗事例をベースにした“壁打ち型”研修で、抵抗感を対話と理解に変換する体験設計 |
さらにPwCの調査によると、日本企業の生成AI導入率が56%に達している一方で、効果実感や運用定着が大きな課題となっていることが明らかになっています。この背景にも、現場との“使い方のズレ”や“疲れ”があると考えられます。
そしてもう一つの課題:思考力の“すり減り”
そして、もうひとつ見逃せないのが「生成AIの使い方次第では、思考力や理解力そのものが削がれていくリスク」です。
WSJによれば、LLMによるリサーチは便利である一方で、自らの手で調べて考えるプロセスをスキップしてしまうことで、理解が浅くなる傾向が報告されています。
つまり、生成AI活用には“負荷軽減”と同時に“主体性の設計”が不可欠であり、それは若手に限らず、全世代に共通する長期的な課題なのです。
まとめ:ギャップは“壁”ではなく“設計のヒント”になる
世代間で異なる反応や疲労のあり方は、けっして能力差やリテラシー格差ではありません。
むしろ、それぞれの強み・負荷・不安のありかを理解し、分けて設計することが、生成AIを文化として根づかせる鍵となります。
“全社導入”という正解を急ぐよりも、現場の心理と業務に合ったカスタマイズこそが持続可能な活用への第一歩です。
株式会社YEAAHでは、世代別の生成AI活用支援や“疲れない導入設計”のための解決ソリューション検討中です。
ご関心のある方は、以下よりお気軽にご相談ください。
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参考文献一覧
- パーソル総合研究所『スクリーンタイムと脳・メンタル疲労の関連調査』(2025年2月)
- The Wall Street Journal “AI Makes Research Easy. Maybe Too Easy.”(2025年7月)
- MM総研 × BuddieS『世代別AI活用実態調査2025』(2025年6月)
- 日本リサーチセンター『生成AIトラッキング調査2025年6月版』
- PwC Japan『生成AI実態調査2025春(5か国比較)』
Q1. 生成AI疲れって、具体的にどんな状態を指すのですか?
情報の過剰摂取や、出力のレビュー・プロンプト設計に疲れる心理状態を指します。特に若手や日常的に使っている層に多く見られます。
Q2. なぜ世代によって疲れ方やつまずき方が違うのですか?
利用目的・習熟度・仕事観の違いにより、生成AIとの距離感が変わるからです。本記事では「使いすぎ」「迷い」「構え」の3タイプに分けて整理しています。
Q3. チームで導入するとき、どこから始めるべきですか?
まずは「誰がどんな心理的ハードルを感じているか」を把握することが重要です。弊社では世代別の導入起点づくりをご支援するプログラムも準備中です。