はじめに:いま、なぜレガシー刷新が求められるのか
「2025年の崖」とは、経済産業省が2018年に提起した言葉で、既存ITシステムの老朽化・ブラックボックス化により、2025年以降に最大12兆円の経済損失が発生する可能性を示したものです。
以降、多くの企業でDXの必要性は認識されながらも、投資優先度や第三者依存の構造から改革が進みにくい状況が続いています。
こうした現状を受け、経済産業省は2024年の重点計画に基づき「レガシーシステムモダン化委員会」を設置。2025年5月、その総括レポートが発表されました。レポートは、企業の立場に寄り添いながら、現場での課題と対応の方向性を整理しており、実務に生かしやすいヒントが詰まっています。
見えてきた本質的な課題:構造の分断がDXを止めている
レポートでは、企業がDXを本格的に進める上で、経営層・情報システム部門・外部ベンダー間の連携や認識のギャップが大きな課題であると指摘されています。
- 経営層がDXの意義を十分に理解しきれていない
- 情報システム部門に戦略実行の権限や裁量が乏しい
- ベンダーとの関係が発注型に固定され、共創の体制が築けていない
こうした構造的な課題により、現場は「進めたくても進まない」状況に直面しています。単にツールや人員の問題ではなく、企業全体としての意思統一や体制整備が求められることが、あらためて浮き彫りになっています。
レポートが示す実践的アプローチ:4つの重点方針
レポートでは、課題に対する実務的なアプローチが、ユーザー企業・経営層・ベンダー企業など立場ごとに丁寧に整理されています。
🔹 ユーザー企業の取り組み
- IT資産の可視化と棚卸し
- 内製化・人材育成の推進
🔹 経営層の関与
- トップダウンでDXを推進し、現場任せにしない意思決定体制の構築
🔹 ベンダーの役割転換
- 「開発請負業者」から「モダナイゼーションの伴走パートナー」へ
🔹 業界協業・共創
- 知見共有や業界横断的な連携によるエコシステム構築
これらの対策は、一部の先進企業だけの話ではなく、どの企業でも段階的に取り組める内容が中心です。「自社にもできる範囲から、少しずつ」と感じられる実践的な内容となっています。
現場からの提言:見落とされがちな“2つの論点”
①「完全再現」を目的にしすぎないこと
現場業務に合わせてカスタマイズを重ねたシステムは、結果として複雑化し、標準的なパッケージやSaaSへの移行が難しくなる傾向があります。レポートでも、こうした「現行機能保証」や「現行踏襲」への強いこだわりが、モダン化の大きな障壁となっていると指摘されています。
現場の納得を重視することは重要ですが、すべての機能を移行先に“そのまま再現する”ことが本当に必要かどうか、業務自体の見直しも含めて、柔軟な対話と整理が求められます。
✔︎完全再現ではなく、「ここまでなら標準に寄せられる」という共通理解を築くことが、改革を進める第一歩となります。
②生成AI活用には“データ移行”が不可欠
最近注目されているRAG(Retrieval-Augmented Generation)などの生成AI活用は、既存のデータ資産の構造化・可視化が前提になります。レポートでも、レガシーシステム内に散在したサイロ化データが、生成AIなどの新技術の活用を妨げているという課題が強調されています。
つまり、生成AIを活用したくても、まずは「レガシーシステムに閉じ込められたデータを取り出す」工程が必要です。この観点からも、可視化・移行・構造整理の取り組みは避けて通れません。
✔︎RAGのような先進的な仕組みを目指すには、“まずデータを出せる状態にする”という基盤整備が大前提となります。
生成AI活用の“その先”を見据えて──データ整備の意義と展望
生成AI、とくに社内ナレッジの検索に強みを持つRAG(Retrieval-Augmented Generation)などを活用するには、「データが整理されていて、アクセスできる状態」であることが前提です。
今回のレポートでも、レガシーシステム内にサイロ化したデータが生成AI活用の足かせになっていることが指摘されています。PDF、Excel、Wordなどに散在する非構造データの見える化、タグ付け、メタデータの整備など、やや地味ながらも非常に重要な準備作業が求められます。
✔︎たとえば、「社内FAQ」「業務マニュアル」「規程集」などをAIが検索できる状態にするには、事前のデータ整備が不可欠です。
RAGによる生成AIの活用は、属人化した業務知識の引き継ぎや、問い合わせ対応の効率化などにもつながる可能性があります。将来的に生成AI活用を目指す企業にとって、「レガシー刷新」と「データ整備」は、いわばその“入り口”とも言えます。
YEAAHの取り組み:現場実装を支える具体的支援
株式会社YEAAHでは、レガシーシステムの刷新やモダン化を“実行可能なプロジェクト”として形にしていくお手伝いをしています。私たちは、企業の皆さまの現場に寄り添いながら、一歩一歩を丁寧に進めていくことを大切にしています。
- 現状の把握から始められる「簡易可視化テンプレート」やヒアリング支援のご提供
- 自社の状況に合わせた内製体制の構築支援
- 段階的なモダナイゼーション計画の策定と実行のご支援
「まずは見える化から始めたい」「内製化に興味はあるが進め方がわからない」といった段階でも、柔軟に対応可能です。あくまで、企業様のご事情やご準備状況に応じて、無理のないかたちで進めていければと考えています。
おわりに:小さな一歩からでも、動き出す意味
限られた体制やリソースの中でも進められる、現実的なレガシー刷新。これは単なる技術更新ではなく、企業がこれからの変化にしなやかに対応していくための“備え”でもあります。
レポートによって、課題の整理と方向性が明確になった今、小さな一歩を踏み出すタイミングとして検討してみる価値があるかもしれません。
ご相談をご希望の方へ
株式会社YEAAHでは、レガシーシステムの可視化・内製化支援・モダナイゼーションに向けた計画立案と実行の伴走まで、企業のご状況に合わせた柔軟なサポートを行っています。
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参考リンク・出典