第1回|なぜ卓越した組織ほど「一体感を設計する」のか

マネジメント
この記事は約4分で読めます。

―― 設計の前提:偶然に任せないという判断 ――

この問題は、現場の工夫ではなく、組織としてどう扱うかの話です。

近年、心理的安全性、エンゲージメント、チームフローなど、
「人と組織の状態」に関する議論が注目されています。

本連載は、こうした現代的な関心を、
一時的に集まる組織(式典・イベント)という場で、どう設計可能にするかを整理したものです。

一体感は、偶然に任せてはいけない

組織の一体感は、偶然に任せてはいけない。

にぎやかさでも、盛り上がりでも、その場の雰囲気でもない。

設計すべきものである。

この一文に違和感を覚えたなら、それは自然な反応だと思います。

多くの組織では、一体感は「うまくいけば生まれるもの」「場の空気次第のもの」として扱われてきました。

しかし、組織が大きくなり、多様化し、分散していくほど、その考え方は通用しなくなっています。

「揃っているつもり」の組織が増えている

式典はやっている。
全社イベントも実施している。
トップのメッセージも発信している。

それでも、組織は動かない。

  • 行動が変わらない
  • 温度差が残る
  • 決断に時間がかかる
  • 変革が定着しない

こうした状態は、意欲や能力の問題ではありません。

多くの組織は、揃っている“つもり”になっているだけなのです。

表面的には問題がない。しかし、深いところでズレている。

この状態が、今の組織にとって最も厄介です。

なぜ「揃わない」ことが問題なのか

組織が揃っていないと、何が起きるのか。

  • 方針は理解されるが、実行されない
  • 誰も反対していないのに、進まない
  • 会議は増えるが、決断は遅れる

これは、誰かが悪いから起きているわけではありません。

揃っていない状態が、前提として放置されている
から起きています。

揃っていない組織では、
どれだけ正しいことを言っても、
どれだけ丁寧に説明しても、
動きは鈍くなります。

組織は「公式な場」では揃わない

ここで、一つの前提を置き直す必要があります。

組織は、会議室やスライドの中だけでは揃いにくい。

公式な場では、

  • 立場が前に出る
  • 発言が整理される
  • 感情が抑えられる

結果として、本音や温度感は共有されにくくなります。

組織の温度感や納得感は、
非公式の場で共有されやすい。

  • 感情が表に出る
  • 空気が共有される
  • 言葉にならない理解が生まれる

この領域でこそ、人は同じ方向を向きやすくなります。

式典・イベントの本当の役割

ここで、式典やイベントの意味をあらためて定義し直します。

式典やイベントは、余興でも、形式行事でもない。

組織を揃え直すための、数少ないマネジメントの場 である。

日常業務の中で、
組織全体が同じ時間・同じ空間を共有する機会は、
実はほとんどありません。

だからこそ、式典やイベントは特別なのです。

ここを「何となく」扱うか、
「意図を持って」設計するかで、
組織の状態は大きく変わります。

「設計しない」という選択は、中立ではない

多くの組織が、一体感を設計しない理由は明確です。

  • 忙しい
  • 前例を踏襲している
  • トラブルを避けたい
  • 正解が分からない

どれも、もっともです。

しかし、ここで一つだけはっきりさせておきます。

一体感を設計しないことは、中立的な選択ではない。

それは、

  • 偶然に任せる
  • 属人性に任せる
  • 揃わない可能性を受け入れる

という判断を、無意識に下しているということです。

この連載で扱う問い

この連載では、一体感を「感覚」や「演出」としてではなく、
マネジメントの問題として扱います。

扱う問いは、次の通りです。

  • 組織が「成立している」とは、どういう状態か
  • なぜ理念は説明しても腹落ちしないのか
  • なぜ人は論理だけでは動かないのか
  • なぜ一体感は、その場限りで消えるのか
  • それらを、どう設計すべきなのか

派手な成功事例や、即効性のあるノウハウは扱いません。

代わりに、判断できる基準を提示します。

次回へ

そもそも、組織が「揃っている」とは、
どういう状態なのでしょうか。

次回は、
組織が成立している条件とは何かを、
組織論の視点から整理します。

おわりに

組織の一体感は、自然に生まれるものではありません。

そして、軽く扱ってよいものでもありません。

設計するか、放置するか。

その選択は、すでにマネジメント上の判断です。

関連記事一覧

第0回|なぜ式典は「無難に失敗する」のか

Q1. なぜ卓越した組織ほど「一体感を設計する」のでしょうか?

A. 組織が大きく・多様になるほど、一体感は自然には揃わなくなるためです。
規模拡大や分散が進むと、偶然に頼って揃うことが起きにくくなり、意図的に設計しなければ組織の温度感や方向性がズレやすくなります。

Q2. 一体感は「盛り上がり」や「雰囲気」と何が違いますか?

A. 盛り上がりは一時的な反応ですが、一体感は方向性が揃った状態です。
盛り上がりはその場限りで終わることがありますが、一体感は「同じ方向を向いている」という納得感や温度感が共有されている状態を指します。

Q3. 会議やスライドなどの公式な場だけでは、なぜ揃いにくいのですか?

A. 公式な場では理解は揃っても、感情や温度感が揃いにくいためです。
立場や役割が前に出ることで発言は整理されますが、本音や納得感の共有が起きにくく、結果として行動の方向が揃いにくくなります。

Q4. なぜ非公式の場が組織を動かしやすいのでしょうか?

A. 非公式の場では感情や空気が共有されやすく、理解が同期しやすいためです。
言葉にならない納得感や温度感が揃うことで、個々の判断が同じ方向を向きやすくなります。

Q5. 「一体感を設計しない」ことは、なぜ問題になるのですか?

A. 揃うかどうかを偶然や属人性に委ねる判断になり、再現性が失われるためです。
設計されていない一体感は毎回ばらつきが生じやすく、組織の動きが鈍くなるリスクを残し続けます。

タイトルとURLをコピーしました