―― バーナードの「3つの組織要素」から考える ――
「失敗ではないが、成功とも言えない」式典が増えている
社長が話している。
しかし、会場の反応が読めない。拍手はある。だが、波にならない。
終了後、「無難だったね」で終わる。
多くの式典は、表面的には問題なく終わります。
- 進行は滞りなく進み
- トラブルもなく
- スケジュール通りに終了する
しかし、終了後に残るのは、こんな感覚ではないでしょうか。
- 何かが揃った感じがしない
- 空気が動かなかった
- 「無難だったね」という評価
これは明確な失敗ではありません。
しかし、組織を動かした実感もない。
本稿では、この状態を
「演出が弱かった」「盛り上がりが足りなかった」
という言葉で片付けません。
問い直すべきは、もっと根本です。
その場は、本当に「組織」として成立していたのか。
これは、演出の巧拙の問題ではありません。
組織が成立していないことを示すサインです。
組織は「集まっただけ」では成立しない
組織論の古典として知られる
チェスター・I・バーナード は、
組織について非常に厳密な定義を与えています。
バーナードによれば、組織が成立するためには、次の3つの要素が必要です。
- コミュニケーション
- 貢献意欲
- 共通目的
重要なのは、これらが同時に成立していなければならないという点です。
- どれか一つでも欠ければ、組織は成立しない
- 順番はない
- 部分的成立は意味をなさない
つまり、組織とは「人が集まっている状態」ではなく、
3つの要素が同時に機能している状態
を指します。この定義を、式典に当てはめてみましょう。
コミュニケーションは「発信」ではない
多くの式典には、スピーチがあります。
- トップのメッセージ
- 経営方針
- 未来へのビジョン
音響は整い、映像も鮮明です。
「伝える手段」は十分に用意されています。
しかし、式典後にこう感じることは少なくありません。
- 本当に伝わったのか分からない
- 反応が見えなかった
- 登壇者自身も手応えを持てていない
バーナードが言うコミュニケーションとは、
情報が送られたことではありません。
意味が共有された状態 です。
反応が見えない、揃わないということは、
「盛り上がらなかった」のではなく、
コミュニケーションが成立していない
状態だと捉えるべきです。
貢献意欲は「参加している」だけでは生まれない
式典の参加者は、確かにそこにいます。
- 着席している
- 拍手をしている
- 話を聞いている
しかし、これらは
バーナードの言う「貢献意欲」とは異なります。
貢献意欲とは、
組織のために、自ら関与しようとする内的動機
です。
受動的に座っている状態では、
人は「組織の構成員」ではなく、
単なる「聴衆」に留まります。
- 自分がこの場を作っている感覚がない
- 何かを差し出している感覚がない
この状態では、人は組織の一部として存在していません。
共通目的は「掲げるもの」ではない
多くの式典では、共通目的が語られます。
- スローガン
- 経営理念
- ミッション・ビジョン
しかし、語られたことと、
共有されたことは別です。
バーナードにおける共通目的とは、
個々人が、その目的に向かって行動しようとする意思を持てる状態
を指します。
理念を「聞いた」だけでは不十分です。
- 腹落ちしていない
- 自分ごとになっていない
- 行動につながらない
この状態では、
組織は方向性を持っていないのと同じです。
問題の核心は「3要素が同時に成立していない」こと
ここが、本稿で最も重要なポイントです。
式典が機能しない理由は、
3つの要素が部分的にしか扱われていないことにあります。
- スピーチで共通目的を「語ったつもりになる」
- 拍手で貢献意欲を「引き出したつもりになる」
- 進行によってコミュニケーションが「成立したつもりになる」
しかし、これらは同時に成立しているとは言えません。
結果として、
どれも「やっている」が、
組織は「成立していない」
という状態が生まれます。
式典を、組織論から再定義する
ここまでを踏まえると、
式典は次のように定義し直すことができます。
式典とは、
一時的に集まった組織において、
コミュニケーション・貢献意欲・共通目的を
同時に成立させるための場である。
成功するかどうかは、偶然や雰囲気に左右されるものではありません。
設計されているかどうかで決まります。
次の問いへ
ここまでで、式典が揃わない理由の一つは、
「組織が成立する条件が、同時に満たされていないこと」
だと分かりました。
では、ここで次の問いが立ち上がります。
組織の「共通目的」は、どうすれば本当に共有されたと言えるのでしょうか。
まとめ
- 式典が揃わないのは、演出不足ではない
- 組織成立条件が同時に成立していない
- バーナードの3要素は、式典設計の基準になる
- 一体感は、偶然ではなく管理対象である
式典は、本来、組織を再起動するためのマネジメント装置です。
それを機能させるかどうかは、設計するかどうかというマネジメント上の判断にかかっています。
Q1. なぜ式典では、人が集まっているのに組織が揃わないのでしょうか?
A. 人が集まっていることと、組織が成立していることは別だからです。組織が成立するには、複数の条件が同時に満たされている必要があります。
Q2. バーナードの言う「組織が成立する条件」とは何ですか?
A. 組織が成立するためには、コミュニケーション・貢献意欲・共通目的の3つが同時に機能している必要があるとされています。
Q3. なぜスピーチや進行があっても、組織は成立しないことがあるのですか?
A. スピーチや進行があることは、条件の一部を満たしているに過ぎません。3つの条件が同時に成立していない場合、組織としては機能しません。
Q4. 共通目的が語られているのに、なぜ組織は同じ方向を向かないのでしょうか?
A. 共通目的は語られただけでは成立せず、個々人がその目的に向かって行動しようとする意思を持てる状態になって初めて機能します。
Q5. 式典が「失敗ではないが成功とも言えない」状態になる原因は何ですか?
A. 組織成立の条件が部分的にしか満たされておらず、3つの要素が同時に成立していないことが原因です。
